ニコンEM修理雑記 
投稿者:MARK12さん

・プロローグ
海外で先行発売されていたが、国内仕様はF3と同時発売となったリトルニコンの
愛称を持つ可愛い一眼レフである。ジュウジアーロデザインのスタイルは、なかなか
と思う。今でも根強い人気を保っているのが判る気もする。
ニコンの35mm一眼レフでは最小クラスのボディだったが、ペンタ部が相対的に
大きく堂々としている。やはり一眼レフは、マウント径に負けない大きさのペンタ部
カバーが望ましいと考える。ちなみにコンタックスRTSシリーズのペンタカバー形
状は力強く美しいと思う。さすがポルシェデザインだ。

・購入経緯
EMは、そのフォルムに惹かれながらもAE専用ということで、今まで手を出さなか
った(人気があるので、中古相場が高めだったのも理由のひとつ)。
今年の5月末、外観は美品だがメーター非作動(つまりメカシャッターのBとM90
のみ使用可)、ファインダー内のゴミ、汚れも目立つという代物。おまけに巻き戻し
ノブを引き上げれば基部のあたりにかなりの錆が出ている。最悪、外装部品は利用で
きると考えたが、再考ということでジャンク品ワゴンに戻した。
しかし、すぐその後に別の客の目に留まり、買うつもりか手に持ったまま店内を物色
している。そうなるとちょっと惜しい気がしたが、諦めて自分も他のものを物色。
10分程して再びワゴンを見ると、例のEMが戻されている。やはり感度設定ダイアル
軸部の錆かファインダー内の汚れが気になったのであろう。私はすかさずEMを掴むと
先に選んでいたMCロッコール28mmF3.5美品や諸々のカメラアクセサリー共々、
お店のカウンターへと歩みを進めた。

・修理経緯
早速、購入翌日の日曜日にEMを分解して修理に取りかかる。巻き戻しダイヤル基部の
錆は、感度設定ダイヤルを固定している鉄製のC形リング(リテナー)の派手な錆のみ
と判明。Cリングの錆除去と感度設定部周りの清掃を行う。結果、接触不良が直って
通電OKとなりメーター作動も復帰した。さすがSPD受光素子はCdSのような劣化
が少ないので測光指示値も正確だ。心配していた回路は、単なる導通不良で、こうして
あっけなく直った。この日はここまでで続きは翌週にした。
こうなると気になるのが、ファインダーの見え具合である。EMはファインダースクリ
ーンが交換式ではないので、たかがスクリーンを清掃するにもかなりの分解が必要だ。
スクリーンを外すには前面のレザー貼りを剥がして、前板ごと外さなければならないこ
とに気付いてこの方法は諦めた。何とかペンタプリズムを動かすか外して、スクリーン
上面から清掃することにする。
F3やEMあたりから、ダイキャストボディの上面、前面、底面とフレキシブル基盤が
つながっていてニコマートEL系のようにはプリズムが容易には外せない。何とかプリ
ズムを浮かす状態でスクリーンを清掃したが、四苦八苦だった。
スクリーン枠の周辺には、遮光のためのモルトプレンが施されているが、これが経年劣
化でぼろぼろになり、スクリーン面に付着しやすい。モルトが乾いた粉状になっていれ
ば、ブロアで吹き飛ばせるが粘性を帯びた状態だと簡単に取れない。これをアルコール
などの洗浄液を付けた綿棒などで丁寧に拭い取ることになるが、モルトが洗浄液に溶け
た状態になるので、綺麗に吹き切るまでは、スクリーンは黒く汚れて惨憺たる状況をに
なってしまう。着脱式でないスクリーンは、普通はブロアで吹く程度で諦めるのが無難
かもしれない。
尚、EMはシャッタースピードが1/30〜1/15秒以下の低速になると音で警告す
る方式となっている(電源入りの状態では常にON)。このブザーの圧電素子がペンタ
部寄りの上カバー内側に貼り付けてある。ブザーの配線はボディ側の基板上のパターン
に半田付けされているので切らないように注意が必要だ。本格的な分解時には、外して
再半田付けした方がやり易いかもしれない。その他のカバー側の配線は接触接点方式な
ので、半田付け配線はない。

・エピローグ
ミラー部のモルトは自分で切ったモルトを修理時に貼っていたが、後日、ニコンのサー
ビスセンターからEM用の純正モルト一式を購入してミラー部、裏蓋内などの各モルト
を交換した。
こうしてジャンクワゴンから5千円で救出されたEMは、私のカメラコレクションの美
品クラスの地位を得て、残る余生を送ろうとしている。

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